2026年5月22日から24日までの3日間、SIRUHAのアトリエにて第0回「書く展」を開催しました。窓から新緑の景色が広がる5月のアトリエに、書くことの歴史やさまざまな「書く」のかたち、そしてこれからの時代の「書く」を考える展示を並べまし...
「書く」と向き合う場をつくってみた。── 第0回「書く展」レポート

2026年5月22日から24日までの3日間、SIRUHAのアトリエにて第0回「書く展」を開催しました。
窓から新緑の景色が広がる5月のアトリエに、書くことの歴史やさまざまな「書く」のかたち、そしてこれからの時代の「書く」を考える展示を並べました。
約40名の方にご来場いただき、「書く」という行為について、一緒に考える3日間となりました。
今回は、その様子と、第0回を終えて見えてきたことをまとめたいと思います。
「書く展」をはじめた理由

この50年ほどで、「書く」という行為は大きく変わりました。
手紙を書くことが当たり前だった時代から、ワープロやパソコンが普及し、キーボードで文字を入力するようになりました。
スマートフォンが登場し、フリック入力が日常になりました。
そして今、AIの進化によって、文字を入力しなくても話しかけるだけで文章をはじめとする様々なアウトプットを生み出せる時代が始まっています。
これから先、この変化がさらに速くなっていくなかで、アウトプットの方法はどのように変化していくのだろう?
その中で、手書きにはどんな役割や価値が残っていくのだろう?
手書き、デジタル、AI、それぞれの良さや役割を整理しながら、これからの時代にとって最適なアウトプットの形を、みんなで考えてみたい。
そして私たちは書く道具の作り手として、今の時代に合った「書く道具」の形を探究していきたい。
そんな思いから、「書く展」を始めることにしました。
展示したこと

「書く展」では、書くという行為について、さまざまな角度から考えたり、実際に書く時間を過ごしたりできる場づくりを行いました。
展示した内容は、
•「書く」の歴史
• 手書き・デジタル・AI、それぞれの特徴
•「書く」と「書かない」
•「書く」体験談
自分が実際に使っている手帳やノートも紹介し、「なぜそのサイズを選んでいるのか」「どんな使い方をしているのか」といった内容も展示してみました。
そのほかにも、書くことについて考えるための問いやまとめをパネルとして展示しました。
展示以外の場づくりとして、
・実際に書く時間を過ごすスペース
・ノートづくりのワークショップ
など、書く時間や書く道具を作る体験についての企画も行いました。
ここからは、それぞれの展示や場づくりについて紹介していきます。
「書く時間」

木造校舎の窓から見える緑。
静かな空気。
手帳や用紙を机に置いて、自分と向き合う時間。
書く展の一画には、自由に書いたり考えたりできるスペースを設けました。
ご自身の手帳やノートに書くのはもちろん、こちらでもテーマ入りの用紙をご用意してみました。
「最近、良い時間だったと思った瞬間」
「今月の目標」
など、その時の気分に合わせて、書く時間を楽しんでいただけるように様々なテーマを作ってみました。
普段の生活では、やるべきことに追われ、立ち止まって考える時間はいつの間にか後回しになってしまいます。
場所や時間を少し変えるだけで、自然と考える時間が生まれるのではないかと思いました。
実際に参加された方からは、
「こんなにゆっくり考える時間は、久しぶりでした。」
「書き始めたら、考えが整理されていく感覚がありました。」
など、たくさんの感想をいただきました。
書くスペースの席が埋まってしまう場面もあり、思っていた以上に「書く時間そのもの」に価値を感じていただける方が多いことに気づきました。
今後、書く時間を過ごせる場をさらに育てていきたいと思っています。
書くの歴史

これからの「書く」の形を考えるためには、これまで「書く」という行為がどのように変化してきたのかを知ることも大切だと思い、書く歴史のパネルを制作しました。書くという行為の起源から現在まで、大まかな流れをまとめた展示です。
改めて歴史を振り返ってみると、私たちが当たり前のように行っている「文字を書く」という行為が、多くの人にとって身近なものになったのは近代以降のことでした。そう考えると、誰もが日常的に文字を書くようになってから、まだ200年ほどしか経っていません。
私は、書くという行為はもっと昔から人々の暮らしに深く根付いてきたものだと、なんとなく思っていました。しかし、こうして俯瞰してみると、「書く」は、人間がより良いアウトプットの方法を探し続けてきた歴史の一部なのかもしれません。
紙やペンが大量生産され、書くことが広く普及した。 そして現在は、デジタルやAIによって、また新しい変化の途中にいます。
また別の見方だと、産業革命によって紙やペンが広く普及し、書くことが多くの人にとって身近なものになった頃から、社会の変化は急速に進んできました。
その背景には産業革命そのものの影響が大きかったことは間違いありませんが、誰もが気軽に頭の中の構想を描き出し、それを記録したり、人に伝えたりできるようになったことも、その変化を支えた一つの要素だったのではないかと思います。
書く歴史を知ることで、それぞれの方が「これからの書く」について考えるきっかけになっていたら嬉しく思います。
書くと、書かない

「一年後の理想の一日」というテーマを用意し、最初の3分間は何も書かずに考える。
その後、紙に書きながら考える。
書くことによる思考の変化を体験していただく展示です。
頭の中だけで考えている時と、実際に手を動かして書き始めた時では、思考の流れが変わります。
書くことで、曖昧だった考えに輪郭が生まれ、少しずつ具体的になっていきます。
手書き、デジタル、AI

スケジュール管理、タスク管理、メモ、アイデア出し。
それぞれの用途について、手書き・デジタル・AIの特徴やメリット・デメリットを整理し、パネルにまとめました。
デジタルやAIが急速に進化している今、それぞれを適切に使い分けることはとても難しいことだと思います。
使い分けについて考えるヒントになればと思い、この展示を制作しました。
また、来場者の皆さんにも、普段どのように使い分けているかを書いていただくボードをご用意しました。
予定管理はデジタル派の方が多く、考えを整理するときは手書きを選ぶ方が多いなどの傾向も見られました。また、それぞれならではの使い方や工夫も多く集まり、とても興味深い展示となりました。
「書く」体験談

手帳がなかなか続かなかった自分が、なぜ続くようになったのか。どんな手帳やノートを使い、どんな使い方をしているのか。それらについて展示しました。
実際に使った過去のノートを見本に、自分なりの手帳術や書くことの価値についてまとめています。
来場者の方から、この展示について声をかけていただくことが多く、他の人の手帳の使い方について気になっている方が多いことを実感しました。
次回は、ご要望もいただいた「手帳の使い方」をテーマにしたお茶会を開いてみたいと思っています。また、さまざまな方の手帳の使い方を取材し、その工夫や考え方を記事としてまとめてみたいとも思いました。
ノートづくりのワークショップ

今回、ティルナノーグという屋号で手帳づくりやカフェを営まれている手島さんに、ノートづくりのワークショップを開催していただきました。
質感の良い紙と綴じ糸を使い、手作業で一冊のノートをつくる時間。
ものづくりの楽しさだけでなく、「書くための道具を自分でつくる」という体験を通して、書くという行為を改めて見つめる時間になったのではないかと思います。
SIRUHAでもノートづくりのワークショップを行っていますが、作り方や道具が違えば、同じテーマでもまた違った体験になります。
また、ティルナノーグさんの手帳をSIRUHAのショールームでも展示させていただけることになりました。
素敵な質感と使い心地の手帳たちを、今後紹介していきたいと思います。
来場者との対話から見えてきたこと

3日間を通して、たくさんの対話が生まれました。
特に印象に残ったのは、
「お気に入りのノートだからこそ、何を書けばいいか分からなくなってしまう。」というお話です。お気に入りだから丁寧に使いたい。失敗したくない。その気持ちが、逆に「書く」という行為を遠ざけてしまうことがあります。
また、手帳のサイズについて話していると、多くの方が「サイズによって思考の広がりが変わる気がする」と感じていることも分かりました。ポケットサイズだと、A5サイズだと、というようにサイズごとの感じ方や適した用途についても、皆さんの感覚が思っていた以上に共通しているように感じました。
お気に入りの手帳をどう気持ちよく使っていくか?や、手帳のサイズごとの特徴についてなど、これからより深く探究していきたいと思います。
ほかにも「毎日書いて整理することで、できなかったことが少しずつできるようになった。」という経験をお話してくださったり、「綺麗な紙に書くのは緊張して書けなかったけど、今回の展示の書く体験談のところを見て、書くヒントになった。」とおっしゃっていただけたことも、自分と同じ経験をしている方はたくさんいることを改めて実感することができてとても嬉しかったですし、これからの道具づくりへの自信にもなりました。
最後に

今回の開催は、第1回ではなく、第0回としました。
私たち自身も、「書く展」をどんな場として形作っていけば良いかわからない部分が多く、
どんな展示があると考えたくなるのか。
どんな空間だと、自然と手が動くのか。
どんな対話が生まれるのか。
まず一度形にしてみることが必要だと思ったからです。
パネル、書くスペース、交流や体験の場など、どの部分を充実させ、書く展をどう育てていくか?
これから書く展を育てていくためのたくさんのヒントを得ることができました。
全体の感想として、思っていた以上に「書く」というテーマの展示に興味を持っていただける方が多かったです。
そして、展示を見ること以上に、ゆっくり座って考え、書く。
その時間に価値を感じてくださる方が多かったようにも思います。
一方で、改善したいこともたくさん見つかりました。
もっと落ち着いて書ける空間にしていきたい。
交流の時間とのバランスも考えたい。
展示もさらに分かりやすくしたい。
今回感じたことやいただいた声をもとに、さらに展示や体験を育てていきたいと思います。
手帳の使い方を共有するお茶会。
書くスペースの空間づくり。
新しい展示テーマ。
作家さんとのワークショップ。
そして、「書く」という行為についての探究も、さらに深めていきます。
その探究から、新しい書く道具も形作れたらと思います。
少しアイデアを練って、目処が付きましたら、第1回書く展の日程を決めてお知らせさせていただきます。
また、書く展を通してまとめたことや得たことなども共有していきたいと思います。
AIが文章を書く時代だからこそ、人はなぜ手で書くのか。
手書きの価値や役割、そしてこれからの「書く」のかたちについて、これからも皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。
最後になりましたが、未知の試みだった第0回「書く展」にご来場いただいた皆さま、ご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました!

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